壱岐市議会の定数16名について考える―人口比率で考える適正数は?

壱岐市議会の定数はいつから16人?

現在、壱岐市議会の定数は16人です。これは2013年(平成25年)から変更されておらず、人口が減少を続けるなかで“そのまま”になっています。

なお、2013年3月末の壱岐市の人口は29,337人、2025年3月末の壱岐市の人口は23,399人となっており、12年間で約6,000人減少(年間500人ペース)していますが、議員定数は1人も減っていません。

今回、「壱岐市みんなの政治」では、議員定数が他の自治体や人口と比べてどうなのかを分析してみます。

人口と議員定数の比較:壱岐市 or 他自治体
自治体名人口(概算)議員定数1人あたり人口
壱岐市約24,000人16人約1,500人
対馬市約28,000人16人約1,750人
五島市約33,000人16人約2,060人
白石市(宮城県)約32,000人14人約2,285人
羽咋市(石川県)約23,000人14人約1,643人
名寄市(北海道)約26,000人14人約1,857人

上記の表から見てみると、壱岐市は長崎県内の対馬や五島、そして、人口同規模自治体と比較した時に議員密度が高いことがわかります。つまり、壱岐市は他の自治体よりも多くの議員を抱えていると言えるでしょう。

議員一人あたり人口が高い=市民一人一人の意見を反映する活発な議会か?

全国の自治体の中でも、「市議会が特に活発だ」として注目されているのは神奈川県逗子市(人口約55,000人、議員定数17名)です。

逗子市議会は、市民との対話を大切にしながら活発な議論を展開していることで知られており、定例会や委員会の開催頻度が高く、議員一人ひとりが積極的に一般質問や政策提案を行っています。

議員一人あたりの人口は壱岐の倍の約3,000人ですが、議員定数は17人と壱岐市の16人と一人しか変わりません。

また、議会の様子をインターネットでライブ配信し、透明性の高い運営を心がけているほか、市民参加型の意見交換会やパブリックコメント制度を活用し、市民の声を政策に反映する仕組みが整っています。こうした取り組みが、議会の活性化と市政への信頼向上につながっています。

このように必ずしも「議員一人あたり人口が高い=市民一人一人の意見を反映する活発な議会」ということではなさそうです。人数が少なくても、議員一人ひとりがよく働き、工夫を凝らすことで市民一人一人の意見より反映する活発な議会になっていくものと考えます。逗子市議会は、そのよいケースの一つだと言えるでしょう。

壱岐市と逗子市の政治力の違いはどこにある?

では、なぜ壱岐市の議会と逗子市の議会には差があるのか?それは、「市民が議員に何を期待しているか」が異なるからです。

壱岐市と逗子市の政治力の違いを下記の4つの項目で比較分析してみます。

政治文化や市民意識が違う
  • 逗子市のような都市圏では、市民の政治意識が比較的高く、議員に対するチェックも厳しい。その結果、議員も「見られている」意識が強く、発信や政策提案に力を入れる傾向がある。
  • 壱岐市のような小規模自治体では、「人柄」や「地域とのつながり」で選ばれる傾向が強く、政策提案よりも「地元対応(地域行事や陳情処理)」が優先されやすい土壌がある。

立候補者の多様性・競争の激しさ
  • 逗子市では無所属や女性、若手など多様な背景を持つ候補者が出やすく、競争も厳しい。その中で当選するには、政策力や情報発信力が求められる。
  • 壱岐市では候補者数が定数に近く、少数当選がありうるため、政策や発信力がなくても当選しやすい環境にある。

議会改革の取り組みの差
  • 逗子市は「市民とつながる議会」を掲げ、議会だよりの質、情報公開、配信、タウンミーティングなどが充実している。
  • 壱岐市ではこうした外向けの議会活動が十分ではなく、議員も内向きな地元対応活動に偏る傾向があります。

都市圏と離島という環境の違い
  • 都市圏では情報量が多く、外部の政策や制度に触れる機会も多いため、議員自身の学びの機会が多い。
  • 離島は、閉鎖的になりやすく、他自治体との比較や情報収集が不十分になりやすい側面がある。

以上のように、壱岐市と逗子市では「議員に求められる水準」そのものが違っていると言えるでしょう。

つまり「地域のお世話役」か「政策提案型の公人」か。

壱岐市では、「地元の顔」として行事に出席したり、道路の陳情に対応したり、冠婚葬祭にも顔を出すような、いわば“地域のお世話役”が評価されやすい文化があります。

一方で、逗子市のような都市部では、「政策を語れるか」、「市民に情報を公開し説明できるか」が重要視されます。議会の様子はネットでライブ配信され、議員が何を質問し、どう判断したのかを市民が厳しくチェックしています。

つまり、「議員のレベル差」と感じる部分は、市民が議員に何を期待するかの差によって生まれているとも言えます。

壱岐市民が「人柄」や「地元のつながり」を重視するのに対し、都市部では「政策提案力」や「情報発信力」が評価されます。選挙のときにどんな議員を選ぶか、その基準が違えば、議会の質も当然変わってきます。

壱岐の暮らしや政治をよくするのは市民一人ひとりのジャッジにかかっている訳です。

いま問われているのは“信頼に見合う人数”かどうか

議員定数は、「民主主義の担い手」を確保するうえで重要です。


しかし、それ以上に、「今の人口・財政・市民意識とバランスが取れているか」が問われる時期に来ています。

壱岐市においては、現在の16人という数が、本当に市民の信頼に見合っているか、冷静に見直す必要があるのではないでしょうか?

さらに、これからの壱岐市の未来をしっかりと見据えて、広い視点と多様な経験から、現実的かつ革新的な政策提案ができる議員が求められる社会にしていくことが望ましいのではないでしょうか?

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